痛風の治療法について

痛風患者さんに「どうして治療を受けることにしたのか」と尋ねると、多くの人は「痛風発作の痛みにびっくりして」と答えます。

確かにあの痛風発作の痛みを経験してしまったら、急いで病院に行って治療をしなければ!と思うのは当然の話です。

しかし、中には痛風発作もピーク時以外は何とか生活に支障はないし、発作が過ぎれば痛みはウソのようになくなるから…と治療を受けずにいる人がいるのも事実です。

けれど、痛風は治療を受けずに放置しておくと大変危険な病気です。

今回は痛風に対して行われる治療について細かくご紹介をしていきます。

  • 痛風になってしまったけれど通院治療はどんなことをするのか?
  • 痛風の改善のために指導されることはどんな内容なのか?
  • 病院で説明されたことを忘れてしまったから再確認したい

こんな悩みを抱えている方ための情報を具体的に解説しています。!

痛風の治療に「どんなことをするんだろう?」と不安になっているあなたはぜひ読んでみてくださいね。

痛風の治療ではどんなことをするの?

「痛風の治療」はそのまま「痛風」という病気に対してアプローチする治療というわけではないと言ってもいいかもしれません。

痛風の治療と言うのは、基本的に痛風発作と言われている痛風関節炎の治療(関節の痛みを緩和する治療)と、痛風を引き起こしている背景の「高尿酸血症」の治療の両方を行っていくことを表しているからです。

つまり、痛風の治療のためには2つの方向からのアプローチが必要ということです。

痛みだけを抑えても、結局は再発してしまうようなコンディションを放っておくことはできないということですね。

そこでここから「痛風関節炎の治療」と「高尿酸血症の治療」のそれぞれについて詳しく説明していきます。

痛風関節炎の治療とは?

痛風関節炎の治療について

痛風関節炎の治療と言うのは、高尿酸血症(血中の尿酸濃度が高い状態)によって起こってしまっている関節炎(急性・慢性いずれの場合も)を治めることを目的とした治療です。

炎症が起きている状態は痛風発作と言われている状態で、痛みのあまり生活に支障が生じるため、早急にこの痛みを取ることと炎症を鎮めることを行わなくてはいけないのですが、「薬剤投与」によって患部の炎症を抑えながら同時に痛みも鎮めていくことになります。

痛風関節炎の治療で用いられる方法は原則的に、非ステロイド抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs=NSAIDs)が用いられます。

これは文字通り「抗炎症薬」であるので、関節炎が消失すれば投与も中止される薬です。

痛風発作で痛みがピークの際には、比較的多量のNSAIDsを投与するNSAIDsパルス療法という治療法が推奨されています。

これは、例えば

サイキサンを1回300mgを1日に限って3時間ごとに3回まで投与し、それ以降は残る痛みに対して翌日から1日に400mg~600mgのナイキサンを投与する

というような方法です。

また、NSAIDsパルス療法はあまりに早期に中止してしまうと痛風発作が蔓延化し、繰り返し発症してしまうことに繋がるため医師の判断により1~3日程度はしっかりと続ける必要があります。

そして、この方法は身体に全く負担がないという方法ではないので、腎機能障害がある人や胃潰瘍など消化管障害がある人には用いられません。

上記のようにNSAIDsが使用できない場合や、他にNSAIDsによる効果が乏しい場合には、ステロイド剤(商品名で言うとプレドニン、デカドロンなど)を用いて関節炎を消炎します。

さらに、痛風関節炎の治療にコルヒチンを使うことを耳にしたことがあるかもしれませんが、これは痛風発作の予兆期において1錠服用することで発作をスルーさせるために用いる薬となっています。

高尿酸血症の治療とは?

血中の尿酸濃度を下げるには、投薬によって得られる効果ももちろんありますが、基本的には生活習慣の改善や食生活の改善によって治療が進められていきます。

高尿酸血症の治療をしていけば、頻発する痛風関節炎を予防することができますし、その他にも高尿酸血症に伴う臓器障害である尿路結石や痛風腎を予防することもできるのです。

高尿酸血症の治療はどのように進む?

高尿酸血症の治療のポイントとは

実は痛風発作と言うのは、高尿酸血症を由来とする「尿酸塩」がどれだけ臓器に沈着しているかを知るための目安にもなるもので、痛風発作が起こっている=原則的に継続して血清尿酸値を下げるレベルと考えられています。

日本痛風・核酸代謝学会が定める高尿酸血症の治療方針のガイドラインには次のような内容の治療方針が提示されています。

痛風・結核代謝学会ガイドライン

  • 痛風発作の既往があるケースにおいては薬物治療を考慮すること
  • 痛風発作の既往がないケース
  • 血清尿酸値が8.0mg/dl未満の場合
    生活指導のみで経過を観察すること
    血清尿酸値が8.0mg/dl以上の場合
    合併する病態(高脂血症、高血圧症、肥満、耐糖能異常、虚血性疾患など)がある際は薬物治療を考慮すること
  • 血清尿酸値が9.0mg/dl以上の場合には薬物治療を考慮すること

以上のように、食事や生活指導で改善が期待できる軽度の痛風以外の場合はほとんどの場合において「薬物治療」が選択されることになっています。

高尿酸血症を治療するための「尿酸降下薬」とは?

痛風の原因とも言える「尿酸」ですが、実は急激に下降させるとそれによって身体に痛みが現れることがあるのはあまり世間的に知られている事実ではありません。

ですから、痛風と聞くと「尿酸値を抑えればいいのよね!じゃあ薬とかですぐに治るんじゃない?」と思っている人は結構います。

しかし、先述した通り、尿酸値は急激に下げることも危険なものなので、実際には半年くらいの期間を持って、徐々に尿酸を下げていくのが一般的な治療法です。

また、尿酸降下薬には、「尿酸排泄促進薬」と「尿酸生成抑制薬」の2種類があります。

尿酸排泄促進剤では、ベンズブロマロン(商品名ではユリノーム)、プロベネシド(商品名ではベネシッド)などが多く用いられているようです。

一方尿酸生成抑制薬では、今までよく用いられてきたアロプリノール(商品名ではザイロリック、アロプリノーム)に加えて、2011年よりフェブキソスタット(商品名ではフェブリク)が使用可能となったので、患者側にはより自分の体質や状態に合った薬が選べるようになりました。

検査によって尿酸排泄低下型の高尿酸血症と診断された人には、尿酸排泄促進薬を用い、尿酸生産過剰型の高尿酸血症には尿酸生成抑制薬が用いられるのが基本です。

ただ、尿路結石や腎障害が合併している時には尿酸生成抑制薬が第1選択になっているのが現在の治療です。

尿酸降下薬による血清尿酸値の目標は6.0mg/dl以下であり、また尿酸降下薬は長期間の内服が必要になる治療なので、この治療を受けている時は、血清尿酸値がどのくらいコントロールできているのかを知ることと、副作用のチェックのために定期的な血液検査と尿検査を行う必要があります。

痛風の治療に尿酸降下薬を使用する際の注意すべき点とは?

尿酸下降薬の使用で気を付けること

尿酸降下薬を使用するにあたっては、いくつかの注意点があり、その最大に注意点と言ってもいいのが、痛風発作中に尿酸降下薬の使用を開始しないというとこになると思います。

これは痛風発作中に尿酸降下薬の使用を開始することで、関節炎が悪化したり、長期化することがよくあるためです。

また、尿酸降下薬を投与している期間中に痛風発作が起きた場合、尿酸降下薬を増量してしまうと、やはり痛風による関節炎は悪化してしまいます。

もし尿酸降下薬を投与している期間中に痛風発作が起きてしまった場合は、薬の投与を一先ず中止し、速やかに担当医に状況を説明し相談をすることが大事です。

尿酸降下薬を一先ず中止した後、再び開始するときは痛風発作が消失して2週間が経過した後くらいから少量を再開し、血清尿酸値を見ながら徐々に増量していくことになるでしょう。

痛風治療の根幹には生活習慣と食生活の改善がある

痛風においては何よりも生活習慣と食生活の改善が必要で、尿酸降下薬による薬物投与をしていても食生活が以前のまま改善されなければなかなか尿酸値の降下には期待が持てません。

生活習慣や食生活の改善で大切なのは、肥満の防止や改善のための適正なエネルギー量の摂取とさらにアルコール類・果糖(果物の糖分ですね)・プリン体の摂取過剰に注意することです。

一方で乳製品やコーヒー、ビタミンCには痛風の発症を抑制する作用があるので積極的な摂取をすすめられます。

さらに現在の研究では、高プリン体含有の野菜や高たんぱく食については、痛風発症に影響しないということが報告されているので、個人でできることとしては、肉食の抑制とアルコール類の摂り過ぎに注意することを心がけるのが重要でしょう。

痛風の治療は一生続けていかないといけないってホント?

痛風の原因は食生活や生活習慣などによるところも大きいのですが、遺伝的要因や体質なども影響しています。

個人差がありますが体質が多くの要因となっている方の場合は、かんたんに体質を変えるということは不可能なので、一生涯治療を行っていく必要があると覚悟をしておいた方がいいかもしれません。

ですが、痛風の発症率は70歳を超えると圧倒的に少なくなるため70を過ぎて痛風発作がしばらく落ち着いている状況の場合は治療が終了することも考えられます。

というのも、痛風が発症する年齢として最も多いのが30~60歳の働き盛りの年齢で、これには理由があるからです。

一つ目の理由が、体内での尿酸生産量は20歳~40歳ごろにピークを迎え、その後はどんどん減少して行くということにあります。

また、痛風は血中の高い尿酸濃度によって尿酸の結晶が析出し、関節内に付着することで起こるのですが、析出・沈着した尿酸の結晶は、身体の中の白血球が異物とみなして攻撃を開始し、その結果炎症が起きることから強烈な痛みが生じるメカニズムになっています。

二つ目の理由は、高齢とともにこの白血球の働きも鈍り免疫力が落ちるために痛風発作自体が起きづらくなるというところにあるんですね。

以上のふたつの理由によって治療が中断となるケースは十分に考えられますが、30代や40代で痛風発作に見舞われた方にとっては「70歳前後ってあと一体何年あるんだ…」と思ってしまいますね。

だからこそ、血清尿酸値が高いということに気が付いた時からすぐに対策を講じる必要があるのです。

痛風の薬は治療のためにどれくらい飲み続ける必要があるの?

痛風治療にかかる期間と費用についてはこちらのページで詳しく解説していますが、一番長い期間飲み続ける必要のある薬が「尿酸下降薬」で順調に尿酸値をコントロールできたとしても1~2年は最低でも続けていくことになります。

なぜかというと、痛風発作の痛みを抗炎症薬で抑えて症状は落ち着いたとしても血清尿酸値は高いままなのでしばらく落ち着いていても、ある日突然痛風発作を起こしてしまうケースがほとんどで、「1年以上経って忘れたころにまた再発」ということも往々にしてあります。

つまり、上記で説明したとおり「痛風の治療は一生涯」「お薬を飲む期間は2年間」続くと考えておきましょう。

高尿酸血症と痛風の治療の経過について

高尿酸血症の状態を放置しておくと、予期しないときに痛風発作に襲われてしまいます。

痛風発作は夜寝る前~明け方に起きることが多いため、あまりの痛みに飛び起きてしまう人もいるほど。

そして、ひとたび痛風発作を発症すると痛みのピークが2~3日間続くことになります。

つまり次の日が仕事だったとしても、そのままの状態で仕事に行くことは非常に困難であるといえます。

病院を受診して適切にここまでご説明したような治療を行っていけば、多くの場合2週間以内に完全に痛みはなくなりますが適切に治療を行わないと再発を繰り返すことになります。

痛風は食事や生活習慣の改善だけで治療が進められるケースはある?

痛風を発症する直接的な要因となる高尿酸血症は、食事や生活習慣を改善すること+飲酒を控えるなど患者さんが自分で気を付けることで完全に改善が可能なものではありません。

例えば今までお酒を飲んでいたのをスッパリやめて、医師の指導による食事習慣を徹底して行ったとしても1mg/dl前後しか血清尿酸値の下降を望むことができないのです。

これは、尿中尿酸排泄低下や尿酸生産過剰など体質が影響していて血清尿酸値の下降が見込めないという要因が全体の7~8割を占めるほど大きいからです。

痛風発作を起こしたことがある場合は、関節の中に尿酸塩結晶が溜まって炎症を起こしているため、この尿酸塩結晶を溶解させて体外に排出する必要があるのですが、そのためには血清尿酸値を6.0mg/dl以下に保ちながらコントロールすることが望ましいとされています。

つまり、一度でも痛風発作を起こしている場合は、血清尿酸値がすでに9mg/dlを超えていることが多いために、尿酸血清値を6.0mg/dl以下で保つためには3mg/dl前後の血清尿酸値低下が必要ということになります。

なので食事療法だけで痛風の治療を行っていくということは不可能に近いことになるのです。

ちなみに、先述した「痛風・結核代謝学会ガイドライン」の内容を食事療法の観点で要約すると、血清尿酸値が9.0mg/dlを超えている場合は痛風発作のあるなしに関わらず薬物療法を行うことが推奨されており、血清尿酸値が8mg/dl台でまだ痛風発作を発症していない場合は食事療法のみでも痛風発作を防ぐことは可能だということになります。

そして血清尿酸値が7mg/dl台であれば食事療法のみで十分今後の予防が可能なので、この7.0mg/dlをひとつの皮切りとして目安にしておくとよいでしょう。

血清尿酸値が7.0mg/dl以上になると高尿酸血症という診断が下ることになり、高尿酸血症の期間が長ければ長いほど痛風発作が起きやすく、同時に合併症のリスクも高まっている状態です。

投薬治療を望まない場合は、高尿酸血症と判断されたらすぐに手を打つようにするべきです。

早い段階で医療機関を受診すれば栄養管理士さんから食事指導をしてもらうことができるので、もし健康診断などで「高尿酸血症と判断できます」とお医者さんに言われたら、絶対に放っておかずに早めに病院に行くようにしましょう。

また、サプリメントでプリン体をケアしていくのも非常に有効な手段となりますので、一度痛風に効くサプリを試してみると、思ったよりも早く悩みは解消出来るかもしれませんよ。

参考文献:膠原病リウマチ痛風センター両国東口クリニック(痛風の治療と検査の流れ)